70年代的エロスとタナトスが交錯する、つげ義春の夢世界 [1]

  [エラー: isbn:4794959052 というアイテムは見つかりませんでした]

「夢」というのは通常、夜間睡眠時に限定された無意識の世界にて羽根を拡げて、朝の目覚めとともに消失していく類いのものだが、つげ義春さんの描く夢の世界は、昼間の覚醒の世界にまで侵入して人々の記憶に強烈な痕跡を焼き付けていく。

1968年に発表されたつげ義春さんの代表作「ねじ式」は、漫画界のみならず日本の極一部の愛好家に熱狂的に受け入れられたという傑作である。70年代に入ってからこの作品に接したおいらのそのときの衝撃は、今なお忘れ得ない漫画体験となって刻まれたのである。それは、「鉄腕アトム」から「巨人の星」等々と繋がる漫画読書体験とは質的に異なる、全く新しい体験であった。

最近になって、ある古書フェアーの会場で「つげ義春とぼく」というユニークなタイトルの古書に触れ、彼の描いた深遠な夢の世界の想い出が、また甦ってきたのだった。著者はつげ義春さん本人である。書名タイトルに関する考察は本日はスルーする。彼は日本全国、鄙びた温泉地を中心に多くの旅を経験してきたが「つげ義春とぼく」は、そんな旅の想い出などのあれこれを絵と文章にてまとめた1冊である。思えばかつて、いくつかの雑誌でつげさんの旅行記を目にして必死に立ち読みなどをしていた少年時代を懐かしく回顧するのだ。

誰が記述したものかは知らないが、Wikipediaの「つげ義春」のページには、ほぼこの本に書かれている内容が転記されていた。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%A4%E3%81%92%E7%BE%A9%E6%98%A5

(この稿は続く)