黒石発祥の名物「つゆ焼きそば」は見習うべきソウルフードなのだ

青森県の青荷温泉からの帰り路、黒石市内の食堂にて「つゆ焼きそば」を食した。

黒石名物の「つゆ焼きそば」は、多くのB級グルメ情報にてその存在は知っていた。だが、こんな味だったとは! その味においてはひたすら吃驚なのだった。

注文すると間も無く調理場からは、麺を「ジュー、ジュー、ジュー」と焼く音が聞こえてきた。古惚けて小さな店内にはひたすら大きく響き渡る。数分の後「ジュージュー」の音は収まり次の工程に入ったことがうかがわれる。だがその行程が、予想以上に長かったのだった。ただ焼いた麺にスープをかけたものではないらしい。

そしてやっと運ばれてきた注文の品には、黒ずんだスープの中に、キャベツ、豚肉、天かす、ネギ、等々の食材が浮いている。箸でスープの中を掬うと、幅広い太目の麺が顔を出した。

まずはスープを一口。この瞬間が予想外の出逢いであった。ラーメンのスープの味でも無ければ、そば、うどん類のつゆの味でも無く、全く新しい。ツーンとしたソースの香りさえもがまろやかに調和している。不思議な味わいなのだ。

多分は中華そば用のスープがベースに、焼きそばのソース、天かす、ネギ、等々の味わいが混ざり合ったスープが、こんなにも調和の取れたものだったのかという発見、思いもつかない発見なのであった。

日本そばにはかつお+昆布出汁、そして中華麺には鶏ガラスープと、云わば固定観念に囚われていた日常の食文化的常識を打ち破るくらいのインパクトが在ったと云うべきだろう。岡本太郎さんではないが「何だ、これは!」と、思わず叫びたくなる。

ジャンクフードだとばかりに思っていたものが、実は素晴らしいソウルフードであったという訳なのだ。地域で食されるソウルフードはこうでなくてはならないという、まさに見本のような素晴らしい料理なのである。