福島の飯坂温泉は寂れていた

福島県を旅行中である。所謂ゴールデンウイークに何も安らぎの時を持てなかった故の、遅れたバケーションのようなものである。福島といえば云うまでもなく昨年の311の大地震被害とそれに伴う原発爆発の被災という累乗された被災地として、もっとも関心の高い地域ではある。いつもは東北旅行と云えば福島はたまには途中下車してみる土地柄ではあった。だが今回は兎に角も行きたい土地だったのである。

夜の街の歓楽街としての福島市街は、想像していたよりも数倍は賑やかであった。市街地の主要道路を占めるのがタクシーの縦列であった。深夜にわたってこの地の呑兵衛たちは酔いの時を過ごし、そして帰りにはタクシーや代行車やらの、決して安くはない業者への支払いを、日常的に行なっている県民市民は、けだし貧乏な被災地というイメージから程遠いものではある。

市街地の夜の居酒屋で注文したのは「餃子」である。この土地のB級グルメであるとのインフォメーションを受けていたことからでは在る。厚めの皮にシンプルな野菜の餡が入っている。消費量を見れば数字的には宇都宮や浜松に劣るのであろうが、ここ福島の餃子は立派にB級グルメの冠に似合うものだと理解していたのではある。グルメの基準が数字でばかり計れること自体がそもそも可笑しいのである。

市街地の喧騒に比べて、立ち寄った福島市内の「飯坂温泉」は、閑散としていた。福島駅から電車で30分弱という好立地、松尾芭蕉が入った「鯖湖湯」という名湯を持ちながらも、観光地の風情は感じられない。逆に目に飛び込んだのは「がんばろう!!福島」「飯坂温泉は負けない!!」というのぼり旗だ。震災とそれ以上に原発爆発事故の影響で、観光客が激減しているのがはっきり見て取れる光景である。市街地の喧騒と名門温泉郷の寂れ振りとのギャップは凄まじいものである。福島に対する所謂風評被害が甚大である。