「孤独のグルメ」の不思議な魅力

新装版「孤独のグルメ」を読んだ。久住 昌之の原作、谷口ジローの作画というコンビによる作品で、じわじわとファンを増やしたといういわくつきの作品だ。

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漫画を読むという行為はあまりなく、ほとんどの漫画に対しては「見る」あるいは「斜め読みとばす」という程度のものなのだが、「孤独のグルメ」には読むに値するものを感じとっていた。

町のちょっとした食堂、レストランでの料理を食する主人公は、何やらいわくありげな個人の貿易商といった設定だ。仕事で訪れた町をさまよいながら、ぶつぶつと何かを呟きながら、一期一会のグルメとの出会いを目指す。ただ食いしん坊だはからという見方もできるくらいに、強靭な胃袋と食欲を有している。ハードボイルドな仕草や出で立ちはドラマに緊張感を与えるが、主人公の背景が掘り起こされるといった展開がなされる訳ではない。ひたすら町を彷徨い、食欲と胃袋が満たされることを志向する主人公がいるだけのような気もしてくる。けれども何か惹かれるものを、この奇妙な漫画さくひんは持ち合わせている。

食事をする姿は人間の本能にかかわるものであり、恥ずべき要素を含んである。ぶつぶつと独り言を云いながら料理を食する姿は、そんな恥ずべき行為でありつつ、あえてそれを漫画の主人公の姿としてさらすことにより、共感を生み出しているのかもしれない。