松尾スズキの芥川賞落選で高まる期待

本日発表された今年上期の芥川賞・直木賞で、芥川賞には「該当作なしとなった。昨年の受賞作「」終の棲家」などといった凡作にうんざりしていたおいらは、芥川賞に対する憧れなどとうに無い。そもそも「天才」太宰治や「世界の」村上春樹を落選させてきたという負の歴史を担うのが芥川賞なのである。望まずにして名を使用された芥川龍之介先生こそはこのような歴史をなげんでいるに相違ない。

今日記しておきたいのは、候補者として名を連ねた中に「松尾スズキ」という名前を発見したこと、そして見事にも落選(2度目だそうだ)を果たしたということなのである。

あらかじめに断っておくが、おいらは今回スズキ氏が候補作となった作品を読んでいない。であるからこれから読むことになるのであるが、それが傑作であろうが駄作であろうが、そのような評価、側面とは関係なしに、考えることがあるのだ。それはいわゆるひとつの「人徳の無さ」ということだろう。

新人作家にとっては文壇に人脈を持たないことは当然であり、それ自体は不利な条件にはならないものだ。だがスズキ氏の場合、おそらくは文壇に「敵」をつくっているのではないかという推論が成り立つのである。

以前のスズキ氏の候補作「クワイエットルームへようこそ」は、精神病院を舞台に展開されるストーリーの切れ味の良さに目を瞠ったものである。そして久々に書物で接した容赦の無い人物描写には、度肝を抜かれたくらいの衝撃があった。確かにスズキ氏は才能豊かである半面で毒ガスを噴射している。この毒ガスに対する拒絶反発の動きがあったとして不思議ではない。

とりあえずは審査員たちがスズキ氏落選の弁をどう述べていたのかが興味津津の的である。「純文学ではない」「新人ではない」などといった古典的な言い草は聞けないのだろうが…。スズキ氏にはこれから、日本の文壇を蹴散らすくらいの活躍を期待するのである。