大衆居酒屋の名店、南千住の「大林」と「大坪屋」

大林

東京下町の正統的居酒屋のスタイルを、いまだに壊すことなく伝えてくれるような、希少な佇まいを残す店である。大きな暖簾をくぐって店内に入れば、古き良き時代の空気に満たされる。

一見してここの店主は愛想がない。とっつきにくそうな印象を与えるが、決して悪い気がする訳ではない。コの字型のカウンターの中で身体を大きく使って働く姿を見るにつれ、その厳かな雰囲気に凛としてくるほどである。悪くはない。そんな空気を求めて通う常連客も少なくない。

つまみにはオーソドックスなメニューが並ぶが、どれもが良い仕事が施されているものばかりであり、歴史の重みさえ感じさせる。「ねぎぬた」のぬた味噌はといえば、まったりとして奥深い。「小松菜の胡麻和え」はさらに洗練された和えものであった。ずばり「感動した」の一言である。

南千住駅から大林に向かう場所には「泪橋」という、とても有名な地名が存在する。偉大なちばてつや先生による「明日のジョー」の舞台となった場所である。ハングリーな精神を矢吹丈はこの土地を舞台に培ったのである。「巨人の星」の星飛雄馬以上に意義深い、アニメ界のヒーローが育った場所として特別な場所だということを胸に抱きながら、その周囲を散策した。商店街を歩きながらふと遠くに目をやるとスカイツリーの勇姿が飛び込んできた。この土地から毎日スカイツリーの成長期を眺めるのも悪くない。

■東京都台東区日本堤1-24-14


大坪屋

「南千住」駅を出て徒歩2分程度というロケーションのよさもあり、地元の酔狂たちで賑わっている。ここもまたコの字型の大きなカウンターが店内を陣取っている。ガード下の店なのだが煩くなく却って活気にも似た雰囲気に感じさせてしまうのだから不思議だ。客層もそうだが女将さんやら店員さんたちの掛け声もまた威勢よく、ついついペースに押されて酒が進んでしまいそうだ。

まずはいつものようにホッピーを注文。するとキンミヤ焼酎がたっぷり入った大き目のジョッキとホッピーの瓶がドカンと、テーブルに豪快に置かれたのだ。思わずメニューを眺めたところ「ホッピー大700円 中 400円」とあるのを確認。てっきり「大」だと思って飲んでいたのが「中」だと判り、再度驚いたものである。
そしてつまみは、同店の名物でもある「どじょう鍋」を注文。見た目は素朴でどうってことのない代物に見えたが、口に含んだ途端にそのワイルドなどじょうのエキスが広がった。結構骨がきついのだがそれも悪くない。

一説によれば同店が「酎ハイ」発祥の店だというくらい、ここの酎ハイは人気だ。しかも1杯200円という信じがたい安さ。つまみも200円からあり、つまみ1点+酎ハイ4杯で、たった1,000円でそれこそべろべろに酔っ払えそうな気がする。

■東京都荒川区南千住4-4-1

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