町田康氏の処女作「くっすん大黒」に感動したのだ

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何だかんだありながらも「町田康」という存在はとても気になる作家である。

駄作や傑作を産み出しながら、最近の作品にはなかなか満点をあげることも出来つついたのだった。だが先日は彼の処女作「くっすん大黒」を目にして衝動買いし、あらためて読んでみることにしたのだった。

酒浸りになり顔かたちも醜く変わってしまった主人公は、妻からも逃げられ、生活を立て直そうとしてかごみの整理をしていたところ、大黒様の処理に困ってしまって、あたふたとしてしまい、逍遥の旅に向かう、と云うのがストーリー。だが物語は一筋縄ではいかずに、はちゃ滅茶の展開を取りつつ進行していく。

パンク作家の処女作らしきアナーキーな展開はドラマツルギーに溢れており、好感度を加速させていく。最近の町田康氏作品に見るようなワンパターンの構成や落ちの白々しさは無く、見事である。芥川賞作家の処女作品ならではの力作なり。

パンク作家でなくても多くの現代人が経験しているであろう日常の倦厭や拒否感からワープして導かれるドラマ仕立てのストーリーは荒唐無稽であるが、感情移入もし易くあり、高感度的パンク作品に相応しいといえるだろう。