おやじ評論家風情を頷かせるであろう綿谷りささんの最新作品「かわいそうだね?」

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20歳のときに「蹴りたい背中」で由緒ある日本の芥川賞を受賞して以来、何かと気になる作家の綿谷りささんが手がけた最新作品の「かわいそうだね?」を読了した。

先輩αブロガーのイカちゃんもかつて絶賛していたように、綿谷りかさんの賢こ可愛らしさは特別なものであり、芥川賞を受賞しようがしまいが、綿谷ワールドはおやじのハートを引きつけて止まない。

云わばストーカー的色彩を放っては、日本全国のおやじ評論家風情があれやこれやと評するものだから、りささんも何かとやり難いのではないのかと推察しているのだが、当「かわいそうだね?」においてはとてもりささんらしい、期待を裏切ることの無い作品として出世の道を得たとも云えるだろう。

主人公の女性は百貨店でブランドものの販売を担いつつ、彼とその彼の元カノとの板挟みになって悩みもがいていく。本人にとっては切実であろうがあまり社会一般の行く末に影響を与えることの無いという、ノンポリ的物語が展開していくのだ。

いまを時めく20代後半の女性の感性を満開に匂わせながら、りさワールドに導いてくれるのだから、おやじ評論家風情も願ったり叶ったりであろう。

結末に近づくと勃発するドタバタ的悲喜劇の顛末は、ドラマのプロから見たらば突っ込みどころ満載の出来栄えかと、即ち未熟なストーリーテラーによる展開かと感じる向きもあろうが、おいらは却ってその未熟さが、清々しさにも通じるものとして受け取っていたのである。

20代の後半にこのような作品を世に問うて、この後のりささんは30代の熟女のときを迎えていく訳なのだが、若きときへのレクイエムとしてこの本を読んでいくのも、あながち間違った志向ではないのである。