村上春樹さんのリメイク的新著「パン屋を襲う」

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村上春樹さんの「パン屋を襲う」とは、かつて1981年に発表された作品を元にリメイク的にして先月に出版されたばかりの近著である。

その中味といえば、「パン屋を襲う」という表題そのままに、主人公の「僕」と友人、あるいは「僕」と妻が、パン屋に押し入って襲うというストーリーだ。その理由というのが、「腹が減っていたから」というのであるから、物語はとてもシンプルである。

主人公自らが物語の始まりで解説してくれる。

「神もマルクスもジョン・レノンも、みんな死んだ。とにかく我々は腹を減らしていて、その結果、悪に走ろうとしていた。空腹感が我々をして悪に走らせるのではなく、悪か空腹感をして我々に走らせたのである。なんだかよくわからないけれど実存主義風だ。」

いまやほとんどの日本人にとって「空腹感」を実感することは稀になったが、1981年当時はまだ日常的に感知しえる経験のひとつであった。村上春樹さんの創作の原点のひとつが、空腹感というような極めて形而下的なことで成り立っていたということは、いま改めての発見であったと云うべきだろう。

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