村上春樹「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」の現在的意義(2)販売元の売らんかな的戦略はマイナス的要因となる

[エラー: isbn:9784163821108:l というアイテムは見つかりませんでした]

「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」の先日の発売日には、昼前の午前中に某ターミナル駅近くの書店で予約購入していた。だが翌日には他のターミナル駅近くの書店にてみたところ、店頭に1冊も無い状況であった。超人気作家としての村上春樹さんの人気度、存在感、影響力を改めて思い知らされることとなっていた。

村上春樹作品が売れる理由は一概に述べることはできかねるが、その一つに出版元の特異な販売戦略がプラス的に機能していることは否定できない。今回の出版元となる文芸春秋社も「1Q84」で新潮社が用いた販売戦略をそのまま借用して、図星的奏功を得ているという図式が見て取れる。発売日まで新作の内容を明かさず、潜在的ファンに対して最大限の飢 餓的状況を編み出しているのだ。

先週末の新作販売の熱狂のほとぼりが幾分冷めた今日抱いているのは、出版元による「売らんかな」的戦略は、春樹さんのこの後の展開にとってはマイナスに働くのではないか、という思いである。我が国における特筆される世界的作家の春樹さんだから、近年の間でノーベル賞受賞の期待が高まっている。そのような状況下において、出版元による謂わばごりおし
的販売戦略がもたらすマイナス的要因は決して取るに足らない問題ではないのである。