湊かなえさんの新作「白ゆき姫殺人事件」を読んだ

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かつて「告白」という作品で本屋大賞を受賞するなど、当代きっての人気作家こと湊かなえさんの新作であり、今月29日からは全国ロードショーの映画公開が待たれている。書店にて同作品を目にし手に取って以来、此の作品に対する関心はいやがおうにも高まざるを得なかったと云うべきであった。

だがいざ読み始めてみると、あまり面白味は感じ取れず、かえって違和感を増幅させて行ったのだ。物語はある美人の三木典子さんが殺害されたことをめぐって展開されて行く。「白ゆき姫」とも噂されたというこの世のものとも思えぬ美人殺害の容疑者として、主人公の「城野美姫」が浮上する。此の女性を映画で演じるのが井上真央さんである。

殺害された白ゆき姫に対して容疑者の女性は、取りたてて容貌に特長の無いという女性として描かれている。即ち絶世の美人と容貌に不自由な不美人との関係性がまるでテーマのように進行して行くのだ。まるで小説のテーマが、美人女性を取り巻くその他諸々人物たちの滑稽なる人間模様だと云うのかの如くに物語は進行して行ったのだ。

まるで此の小説は映画の原作でしか無かったのか? そうした疑問でいっぱいにされた読後感なのである。井上真央さんが演じる容姿不自由の女性は、果たして容姿秀麗の美女との対決を望んでいた訳ではなかった。容疑者から物語の犯人が語られるくだりなどは、通常のミステリーマニアたちにとってはとても納得出来かねる結末なのではあるまいか?

才能の安売りは彼女のファンたちをもがっかりさせるに違いない。作家の湊さんは、映画の原作本を書く時は小説本とは称すること無く書いて行ってほしいとせつに願う次第なのである。