綿矢りさの「夢を与える」。創作の背景に何があったのか?

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先日から読み進めていた綿矢りさの「夢を与える」を読了した。世の中の人々に「夢を与える」仕事、つまりタレントという仕事を天職として選んだ、ある一人の女の子を中心に物語が綴られている。彼女の出生前から大学受験後のある時期までを描いた、300ページを超える長編小説である。

初版が2007年2月であるから、刊行されてもう3年が経っている。2004年の「蹴りたい背中」による芥川賞受賞という華々しい経歴から数えれば、6年が経過したことになる。作家というよりアイドルタレントのようなデビューを飾った、綿矢りささんの初々しさは衝撃的であった。おいらも昔主宰していたネット掲示板界隈では、彼女の話題で盛り上がっていたことを想い出す。

今更になってこの本を書店で手に取ったことは、あの当時の懐かしく甘酸っぱい少女小説を期待していなかったといえば嘘になる。あるいは少女から才女へと移り行く成熟の軌跡を覗き見たいというある種の願望が、短くない読書の時間を後押ししていたのかもしれない。だがそうした期待や願望は、見事に打ち砕かれてしまったようだ。

ネタばらしはしないが、「夢を与える」人間となるべく育った主人公は、結局のところ夢を与え得なかったというお話。しかも底が見えそうな、浅薄な展開である。りささんが半分足を突っ込んでいるだろう「芸能界」をテーマにするには、彼女も周囲の雑音に足を引っ張られ過ぎたのかもしれない。誰かによる入れ知恵やら環境的な影響が、物語の創作に薄汚れた添加物を付加していたとすれば、とても残念なことである。大人になるとはこういうものだと断じられるものではない。

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