大塚の鄙びた焼きとん店「富久晴」に立ち寄った

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故郷上州からの帰り道に大塚で途中下車し、焼きとんの専門店「富久晴」にて一献。豚モツの鮮度は以前と同様においらの味覚を刺激したのだった。極めて個人的な事情なのだが、おいらは十数年前、此処大塚に個人事務所を構えていたことがあり、大塚近辺の居酒屋や焼きとんやには深い想い出等が詰まっているのだ。此の場所での事務所を出て以来、昼間の大塚に足を向けたことはあっても夜の店で飲んだことは極く稀であり、ふとした気紛れで途中下車した大塚の街並みとともに、小路に構えたつ店構えの渋い暖簾のゆるゆるとたなびく様が郷愁をそそって堪らなかったのである。

郷愁の情を抜きにして思うのは、生きの良い豚モツが味わえる名店にしては、客が少ないということだった。最初おいらが暖簾を潜って店内に入ると、客は誰も居なかった。先代の親爺から代が代わったのか? 先ずはそんな思いが頭をよぎり、そのあとで先代と共に店を切り盛りしていた女将の姿を目にしてホッとするかの思いであった。味や店構えは以前のままだと感じられるものの、時代の流れからは少々脇に置かれてしまったのかもしれないと思い、なんとも無く悲しい思いを抱きつつ、帰路についていたのである。

■富久晴 (ふくはる)
東京都豊島区南大塚2-44-6 飯田ビル 1F