夏の終わりに「鰻の蒲焼」で一献

unagi01unagi02
関東地方では涼しい日々が3日間も続いており、漸く秋の訪れを感じるのである。秋の訪れは即ち夏の終わりであり、夏に出来得なかったことなどあれこれ思案するばかりではある。此の夏においてはおいらは美味しい鰻を食ってはいなかったことを思っていた。そんなことを思いつつ、某用件にて神田駅界隈に赴いていたらば偶然に、鰻の蒲焼に遭遇できたのだからラッキーと云うべきなのであろう。

昼食時間を過ぎて午後も遅くなった頃に到着した神田駅ガード下界隈の大衆居酒屋「大越」にて、少々時間的には早いがホッピーで喉を潤していたところ、「鰻重」のメニューを見つけたおいらは、早速店員に質問をぶつけていた。

「あの『鰻重』というのは鰻だけのメニューで注文できますか?」

「大丈夫ですよ。鰻の蒲焼にしますね」

そんなこんなの会話を経て後に、有り難きやの鰻の蒲焼にありついていたのだった。経験的に「うなぎ」が夏の体力消耗に効果ありということを知っているおいらは、無意識裡にうなぎを求めていたのだろう。鰻の脂身は程良く癖があり、其の脂身がたまらない味覚となっている。ダイエットのことなど本日くらいは忘れて食したくなる。我が国の文化とも繋がっている逸品メニューであることは間違いないのだ。

土用の丑の日にはうなぎを食べるという習慣は、文政時代に平賀源内さんが提唱したという説が一般的だが、ただ体力の落ちる夏場に栄養補強するという意味合いばかりではなさそうなのである。かえって、夏場にはうなぎが売れない業者達の苦肉の策として、土用の丑の日が提唱されたという珍説もあるくらいであり、二百年もの時代をさかのぼって時代考証を行おうとしても無理な話であり、ここはそっと、うなぎと平賀源内さんとの個人的な相性の良さを思い浮かべてみるくらいが宜しいのだろう。

■大越
東京都千代田区鍛冶町2-14-3
TEL 03-3254-4053