ユリイカ「村上春樹総特集号」インタビューで春樹さんが示したメッセージ

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先月12月25日発行の「ユリイカ」最新号では、村上春樹総特集が組まれている。文芸誌というよりも詩の専門誌として評価され歴史ある「ユリイカ」だが、特別に詩とは深い関わりを持っているとも云えない村上春樹さんを俎上に載せて、文壇人によるあれやこれやの村上春樹論が展開されている。今や全ての文芸誌に於いて村上春樹さん無しには商売も何も成り立たないと、業界の裏側で囁かれているようだが、その一端を垣間見たような気分に陥ってしまう。

目玉となっているのが巻頭インタビューだ。「『1Q84』へ至るまで、そしてこれから…」という副題が付いている。「魂のソフト・ランディングのために」といった意味深のタイトルも設けられている。
小澤英実という聞き手がメールにて質問を投げ掛け、春樹さんがそれに答えるといったスタイルがとられている。春樹さんにとってみればそれだけじっくりと時間をとって、質問者に答え得るのであり、軽い乗りのインタビューでないことは明らかだ。

春樹さんがこのインタビューで最終的に云いたかったのは、「物語」の可能性についてであったと思われる。言語への失望、あるいは物語への疑問提起を経て、やはり彼は、小説家としてのある種の社会的使命を自覚したということに至ったと思われる。その言葉はあっさりとしているが、とても重く響いている。以下にその一部を引用しよう。

(以下引用)-----------
「言語には二つの機能があります。ひとつは個々の言語としての力、もうひとつは集合体としての言語の力です。それらが補完しあって流動的な、立体的なパースペクティブを立ち上げていくこと、それが物語の意味です。スタティックになってしまったら、そこで物語は息を引き取ってしまいます。それは常によどみなく最後まで流れ続けなくてはならない。それでいて同時に、個々の言語としての力をその場その場でしっかり発揮しなくてはならない。状況と切り結びながら、正しい(と思える)方向に着実に歩を進めていかなくてはならない。これはもちろん簡単なことではありません。(後略)」
(引用終了)-----------