「生誕100年 ジャクソン・ポロック展」が開催

米国現代絵画の巨匠と謳われるジャクソン・ポロックは今年、生誕100年を迎えた。それを記念して我国(米国ではなく日本)では「生誕100年 ジャクソン・ポロック展」が開催されている。名古屋展に続き、東京展が東京国立近代美術館にて2/10~5/6の期間で開催中である。

■生誕100年ジャクソン・ポロック展
期間:2/10~5/6
場所:東京国立近代美術館
〒102-8322千代田区北の丸公園3-1

現代作家としてのポロックは尊敬すべきアーティストには違いないが、おいらにとっては同時代の米国で活躍したアーシル・ゴーキーや、アンフォルメル絵画の巨匠ことジャン・デュビッフェ達の方が圧等的なアイドルであって、ポロックに心酔することは無かった。或は作品制作においての影響も小さかったと云うべきである。然しながら今回の「生誕100年 ジャクソン・ポロック展」は企画回顧展として相当規模の展覧会であり、これを見逃したら一生出逢うことの出来ない作品群を思えば、出かけない訳にはいかなかったのである。

まず会場に足を踏み入れて最初のブースで感じたのは、20代のときのポロック作品の充実さである。厚塗りでぐいぐいと表現して行くそのスタイルは、ピカソの初期作品やミロの作品を彷彿とさせ、ある作品は岡本太郎の作品世界を想起させてもいた。ポロックが岡本太郎に与えた影響について、一つの示唆を齎してくれていたのであった。

■インディアンレッドの地の壁画

分け隔てられたブースを辿って行くと、広いスペースにただの1点の作品が展示されている場所へと行き着いていた。作品名「インディアンレッドの地の壁画」。題名から読めるとおり、壁画としての利用を前提として依頼されて制作したという、ポロックの中での数少ないカテゴリー作品に含まれる。

塗料をキャンバス上に滴らせて描くポーリング、ドリッピングと云われる技法や、オールオーヴァー、アクションペインティング等々と称される志向性が頂点を迎えた1950年の作品であり、ポロックと云えば真っ先のこの作品が引用されることが当然となっている。評価額が200億円とも称される、現代美術の最高峰とされている作品である。

ゴッホやピカソを超えたとの評価が与えられているが、これには相当大きな疑問が付きまとっていることも確かである。ヨーロッパに遅れをとっていた米国美術界が金力にものを云わせて総出で手掛けたイベントの一つが、同作品への超高額評価であり、その役割を担う役者としてポロックに白羽の矢が立てられたと云うのが、客観的な見方ではあろう。アメリカンヒーローに祀り上げられたポロックは、センセーショナルな報道のターゲットとなり、映画作品のモデルともなったが、彼にとっての益に適ったかと問えば、決してその様なことは無かったと答えるべきであろう。

■カット・アウト


オールオーヴァーのスタイルを確立したポロックが、そのボード絵画を切り抜いて構成した実験的な作品である。今回の展覧会場でおいらが最も観たかった1点でもある。

人型にも見える切り抜いたその背後には、荒く絵の具を刷り込ませたキャンバス地が姿をのぞかせている。この手法の作品は6点あるとされているが、展示されていたのは我国の「大原美術館」が所蔵しているもので、同シリーズの中心的作品である。

解説文に依れば、このカット・アウト作品の見せ方に苦慮していたポロックは様々な実験と思索を繰り返していたが、突然の事故でついにその完成を示すことは無かったと云う。現在展示されている作品たちは、妻のリー・クラズナーの判断によって完成されたものとなっている。