「となりのクレーマー」は経済至上主義的現代日本が産み落とした鬼子

新書版「となりのクレーマー」を読んだ。著者の関根眞一氏は元西武百貨店にて勤務し、全国3店舗のお客様相談室長および池袋店のお客様相談室を担当。クレーマー処理、苦情処理のプロとしての体験と知見から、同書を記している。消費社会の裏側で蔓延る「クレーマー」たちとの交渉術が述べられ、彼らとのバトルの実例が記されている。全国のショッピングセンター等における講演以来も数多あるといい、クレーマー対策の第一人者として認められている。

少なからずの期待を抱いて読んでいたが、その読後感は決して良いものではなかった。何故だろうか? と考えてみた。そしてその答えとして導き出された一つの理由は、クレーマー処理の達人もまた市場経済、消費社会の申し子だったということだった。同書の副題には「『苦情を言う人』との交渉術」とある。苦情を言う人の人間性を見極めて交渉することが大事だということを、同書の主張の端々にのぞかせている。格差社会から来る人間性の歪みがクレーマー増強の故とされていることや、お客の苦情をきっかけにより大きな販売に結び付けようと主張されているところなどは、同書の著者もまた、経済至上主義的日本国の歪みの一例だと捉えるしかなかったのであり、クレーマー処理の達人も現代的日本社会が産み落とした鬼子であると感じたのである。