なぎら健壱さんの「夕べもここにいた!」は正しい呑兵衛の手引書なり

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正しい呑兵衛の為の手引書として手元に置いておきたい1冊なり。類書に太田和彦氏の著書等が挙げられようが、どうも彼の書いたものはお高く留まっていていけ好かない。「まったりとして至高の味わいが」云々といった表現は流石に見つからないが、似た様なお説教臭さがぷんぷんと漂っている。何も居酒屋へ飲みに行った先で、海原雄山の講釈など聞きたいとも思わないのだ。

その点、なぎらさんによる同書の方は、講釈臭さが全く無く、純粋に酒とつまみと場所を愛し、呑み仲間との交流を楽しむ精神が満ちている。何しろ懐具合の心配もする必要が無いくらいに安価な店をセレクトしているのだから、普段着気分の好奇心で立ち寄るのにとても便利なのだ。吉祥寺「いせや」をはじめ、行きつけの店が何軒かあるが、まだ知らない処も多い。同書片手にこれから出向いていきたいものである。

ちなみに同書の表紙写真の場所というのが、先日「ハッピー★ホッピー」のライブ鑑賞で訪れた北千住の「虎や」である。お店を借り切っての撮影だったと想像されるが、立ち飲み居酒屋の場になぎらさんは程よく馴染んでおり、微笑ましいくらいだ。

フォーク界の酒豪新横綱、なぎら健壱が綴る「日本フォーク私的大全」は、今なお一読の価値あり

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昔からフォーク界の酒豪No.1は高田渡さんであり、長らく伝説とされていた。誰もが認める東の正横綱である。そして2位が友川かずき、3位になぎら健壱という格付けが存在していたとされていた。

高田渡さんが鬼籍に入った今となっては1位友川、2位なぎらという格付けになる訳だが、著者のなぎら氏は、自分が友川の格下にランクされることが許せないというのだ。「解せない!」と公然と異を唱えてこの格付けを逆転させてしまった。あるコンサートの前で飲み始めた二人(なぎらと友川)は、最後は両者がへべれけになり、呂律が回らなかったにせよ何とかステージをこなしたなぎらに対して、友川はグーグーと寝てしまったという。それ以来なぎらは友川を凌駕して、酒豪の名をものにしたという訳なのだった。

そんなこんなの微笑ましいエピソードがぎっしりと詰まった「日本フォーク私的大全」は、今なお日本のフォークの歴史を綴った古典として読み継がれている。他の類書には、このような肉声のレポートが無いばかりか、独りよがりのものばかりであり、結果として同書の価値を高めていると云っていい。他の評者の本がほとんど一般読者の支持を得られなかったのに対して、なぎら本だけが長く読まれ続けられていることは、とても評価に値するのだ。

同書で論じられているアーティストは自分(なぎら健壱)を含めた16人(グループ)。ちなみに商業主義に染まったとして批判される吉田拓郎、井上陽水、泉谷しげる、RCサクセションも取り上げられている。私的な交流が基になっているだけあり、そのレポートはとてもリアルで刺激的であり、しかもハートウォーミングである。

話題は変わるが昨今の芸能マスコミを賑わせている市川海老蔵の泥酔暴行事件では、事件発生当初は「テキーラ」の一気飲みが端緒だったと報じられていたが、それが実は「シャンパン」の一気飲みがきっかけで酔い潰れていたというのが真相だと云う事らしい。シャンパンの一気飲みで酔い潰れる下戸相手の大トラ模様だったのかと、至極興ざめではある。