東京ステーションギャラリーで「ジャン・フォートリエ展」を鑑賞

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東京駅内のステーションギャラリーでは「ジャン・フォートリエ展」が開催されている。ジャン・フォートリエ氏と云えば、かつて世界のアンフォルメル芸術のムーブメントを牽引した第一人者であり、ジャン・デュビュッフェとともにおいらがもっとも気になっている芸術家の一人であるが、それのにかかわらず此れまでには、フォートリエの作品にはほんの数点しか接することができなかった。本日は漸く時間がとれて東京駅内のステーションギャラリーに足を運んぶことができていたのである。

東京駅構内に設置されたステーション・ギャラリーの、3階から2階にかけてのスペースにおいてジャン・フォートリエ作品が展示されている。まず3階のギャラリースペースに足を踏み入れると其処には彼の初期作品の、いわゆる具象的絵画の数々が展示されている。背景を黒く描いた黒の作品と称される作品や、裸婦を描いた作品群を目にして歩いていくごとに、彼がかつての若き頃には具象絵画を熱心に学び研鑽を積んでいたことを理解していく。フォートリエがフォートリエとして羽ばたく以前の具象的な作品群に接して、おいらは其れ等の膨大さに今更ながらに圧倒されていた。更にはその後に来る彼の運命における重大性にも最大的なるドラマツルギーを感じ取っていたのである。

第二次世界大戦後に、フォートリエは何度目かのブームに巻き込まれることになる。「人質」という作品のシリーズが美術界を大きく賑わしていた。ただし其の頃のフォートリエは世間的な評価とは裏腹に純粋な美術的創造の行為に突き進んでいる時期でもあり、当時の彼が生きて描いて生み出した作品群はまさに戦後のフォートリエ作品の真骨頂なのだということを納得させられていた。

彼の晩年の戦後の作品として展示されていたものたちには大作が多くあり、おいらも念入りに鑑賞をするとともに、稀有なる発見に身を震わせていた。例えば「黒の青」を目の前にすると制作時当時の作家の精神の高揚を感じ取るのであり、或いは「干渉」「草」「永遠の幸福」といった作品を目の前にしては作家の純な制作行為の後追い的ビジョンとなってしまうかのごとくである。「植物」という作品を目の前にしておいらはクレーの「砂の上の植物群」という作品を彷彿とさせられていた。そこには卓越した芸術家同士の魂の交流を視認した思いでもあった。

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■東京ステーションギャラリー
所在地:〒100-0005 東京都千代田区丸の内1-9-1
連絡先:03-3212-2485
休館日:月曜日