死者を食って生きる魍魎たちの生態

政界ではまたぞろ魑魅魍魎たちが、怪しい動きをおっ始めたようだ。ところで「魑魅」や「魍魎」と云えば今では絶滅間近ともいわれる妖怪の一種である。妖怪研究の第一人者、水木しげるさんによれば、魍魎とは木石の怪とも云われその特徴として、死者を食べる性癖があると教授している。以下に「妖怪画談」から引用してみよう。

(以下引用)-----------
昔から墓地のあたりに住み、葬式のときには棺桶から死者を引きずり出して食べることもあった。
また、昔は土葬であったから、墓を掘り返して死体をむさぼり食うということは“魍魎”にとっては容易なことであった。
しかし、“魍魎”は虎を恐れるので、墓の上に虎の像と柏の枝を置いておくと、“魍魎”除けになったという。
(引用終了)-----------

特異な性癖ではあるが、成程、その世界に死者が多いというのも納得なり。金庫番や元側近という多くの人間たちが不審の死を遂げている。死者が眠るところにこそ魍魎が群がるということなのだろう。

今年の流行語年間大賞に「ゲゲゲの~」が決定

ユーキャンが主催する2010年度の「新語・流行語大賞」の年間大賞に「ゲゲゲの~」が決定したというニュースが飛び込んできた。今年もっとも流行し印象に刻まれた言葉としての認定である。水木しげるさんの妻、武良布枝さんが著わした「ゲゲゲの女房」を基にしたドラマが大ヒットしたという背景を受けての受賞である。水木しげるブームは想像以上に広く浸透していたということが証明された格好となった。授賞式には水木さんの妻で「ゲゲゲの女房」の作者でもある武良布枝さんが出席し、受賞のトロフィーを受け取った。水木しげるファンの一人としてこの決定を喜びたい。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101201-00000519-sanspo-ent

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武良布枝さんが2008年に発表してヒットした「ゲゲゲの女房」は、今年になって、NHKのTVドラマ化されて国民的な関心を集めた。さらに映画化もされており(12/より全国公開予定)、今やブームの頂点を極めているといった感もある。

著書には、水木さんとのお見合いの馴れ初めからはじまり、赤貧の時代を生き抜きそして作品がヒットして一躍時代のスポットを浴び、家庭では二女の母として苦労しながら逞しく生き抜いている、そんな一人の女性としての、飾ることの無い言葉が綴られている。極めて感動的なエッセイとなっている。

受賞語として「ゲゲゲの女房」ではなく「ゲゲゲの~」とされたのは、このブームには、夫である水木しげるさんの存在の大きさを認めてのことであろう。偉大な夫あってこその妻の栄光か?

先日のエントリー記事でも記したが、水木さんの出世作「ゲゲゲの鬼太郎」は、元は「墓場の鬼太郎」という題名で発表されていた。講談社の漫画賞を受賞してTVドラマ化が検討されていたときにネックとなっていたのが、著作権の問題だったとされている。「墓場の鬼太郎」でのドラマ化が困難であったことをうかがわせる。

「ゲゲゲの~」というネーミングは様々な意味が含まれているが、水木しげるさんが語ったという説明がもっとも分かりやすい。水木さんは自分の「しげる」という名前をうまく発音できずに「げげる」となってしまう。だから「ゲゲゲ」で良いんだと語った逸話を、「ゲゲゲの女房」の本の中で披露している。ゲゲゲのプロデューサーとしての肩書きを持つ夫人ならではの、重い告白であると云えるかも知れない。

エッセイ本の中では、二人が見合いをした後4日で結婚したという、超スピード婚となった舞台裏を公開している。そんなエピソードの数々は、我々の世代とのギャップを浮かび上がらせもする。当時は自由恋愛の結婚などは珍しく、見合い結婚以外の道は無かった、お見合いで結婚相手を決めるのが運命だった、等々の心情を淡々と綴っているくだりはとても印象的だ。

世界の妖怪像を網羅した、水木しげる著「妖怪画談」

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妖怪研究の第一人者こと水木さんがしたためた、一目でわかる画像がふんだんに掲載された入門書である。「水木しげるの世界展」にはその一部が展示されているが、じっくり妖怪世界に浸りたいと、この一冊を購入した。

東北岩手のおしらさま、座敷童子、河童といった妖怪は全国に知られているが、妖怪はそれらばかりでなく、至るところに生息し伝承されている。水木さんは妖怪研究の為に、日本国内のみならず海外へと足を伸ばして、その生態を追究している。戦時中に訪れたパプアニューギニアをはじめ、アフリカ、メキシコ、ペルー、いずれも地域に存在する「霊霊(かみがみ)」の実在を確認している。ニューギニアの「森の霊」を描いたページは、現地の人たちの生活が霊の存在とともにあることを、強烈なイメージとして明らかにしているようだ。

「霊」の字を二つ書いて「霊霊(かみがみ)」と読むのだが、これは実に面白いと書いている。「本来、神様も妖怪も幽霊さんも同じ所の御出身なのだ。」と高察する。

妖精に会いにアイルランドへ行ったり、インディアンの精霊を見に現地へ直行したりと、世界を股にかけている。そんな熱意は、「目に見えない世界」をどのような形にしたのか? という興味からもたらされているという。

子泣きじじい、一反木綿、ぬりかべなど「ゲゲゲの鬼太郎」の登場人物の多くは、民間伝承によって伝えられる妖怪たちの姿が原型になっている。だがこれだけ鮮明な形でキャラクター化されたのは、水木さんの想像力に依っている訳である。主人公の「鬼太郎」はといえば完全なオリジナルであり、その出自等は「墓場の鬼太郎」シリーズによって示されている。「ガロ」「少年マガジン」では「墓場の鬼太郎」として登場していたのだが、テレビアニメ化に伴って現在の「ゲゲゲの鬼太郎」に改題された。どちらがよいということではないが、雑誌時代の「墓場の鬼太郎」は、妖怪たちとの交流の様子がより濃密に描かれている。

「水木しげるの世界展」が八王子市夢美術館にて開催中

昨日(11/26)より八王子市夢美術館では「水木しげるの世界 ゲゲゲの展覧会」が開催されている。ご存知水木しげるさんは「ゲゲゲの鬼太郎」の作者として知られ、近年は「ゲゲゲの女房」という夫人の本がヒット。TVドラマ化、映画化もされるなど、水木ブームが沸き起こっている感さえある。そんな米寿を迎えた彼の、原作品展示はもちろん、伝説的な漫画雑誌「ガロ」における活躍にもスポットが当てられ、見応えは充分だ。

原作品展示の中でも特に、妖怪研究家としての仕事ぶりは、その質量共に充実を極めており、水木的妖怪道の深奥へと連れ込まれてしまうこと必至なり。歌川広重の「東海道五十三次」をもじった「妖怪道五十三次」のシリーズには、思わず知らずに笑みがこぼれてしまい、東海道ならず妖怪道を旅してみたいという誘惑に捕らわれてしまったのだ。

漫画家としての才能の他に、極めて徹底した妖怪達への偏執的執着性に圧倒させられるのだ。つまりは妖怪研究あっての水木先生なのである。「卵が先か鶏が先か」的なるパラドックス、そんな二律背反の世界を妖怪世界の果てまでに追いかけて追求している。その姿勢に脱帽なのである。

なんと「世界妖怪協会会長」までなさっているというくらいにその学問追求の姿勢は徹底しているのだ。水木さんの弟子には、荒俣宏、京極夏彦という著名な作家の名前が挙げられる。ちなみに、漫画家としての弟子には、つげ義春さんを始め池上遼一等々の大御所が名前を連ねている。晩年においてもこれだけ慕われるアーティストはあまり見かけない。天才は夭折するだけが運命と決められている訳ではないことを、この展覧会にて納得させられたのでありました。

■水木しげるの世界 ゲゲゲの展覧会
会期:2010.11.26(金)~ 2011.01.23(日)月曜休館
観覧料:一般500円、学生、65歳以上は250円
場所:八王子市夢美術館
〒192-0071東京都八王子市八日町8-1 ビュータワー八王子2F
TEL 042-621-6777 FAX 042-621-6776