女優山口果林さんが著した「安部公房とわたし」を読んだ

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女優の山口果林さんが著した「安部公房とわたし」で、文豪・安部公房とのかつての愛人生活を赤裸々に綴っている。帯には「君は、僕の足もとを照らしてくれる光なんだ――」とある。果林さんが桐朋学園演劇科時代の師匠と生徒という関係を経て、男と女の濃密な関係へと移っていく事実を、極めて淡々と客観的に綴っている、その抑えた筆致が特徴的である。

そんな抑えた記述の中から何よりも、安部公房が愛人関係を持っていた当時の果林さんに、相当に入れあげていた関係を見てとることができる。師であり、伴侶でもあった二人の関係は、所謂不倫関係として継続され、安部公房の生存中にその関係が公にされることはなかったのだ。

本の表紙には、愛人関係を始めた頃に撮影されたと見られる果林さんのコケティッシュな写真が用いられて目を引く。若い当時の相当な美女振りを印象付ける。そしてページを捲ってみるとその口絵には、安部公房に撮影されたと見られる果林さんの若き頃のヘアヌードを拝み鑑賞することができる。

NHKの朝ドラマ「繭子ひとり」に抜擢され全国区的女優の名声を得た果林さんだが、当ドラマ出演中に子供を身篭っておろしたことや、安部公房夫人との葛藤、子供の頃には両親にも打ち明けられなかった性的な悩み事を打ち明けた話等々の驚くべきエピソードも綴られている。

山口果林さんのファン、安部公房の愛読者はもとより、文豪と女優の熱く長い恋物語としても読むことができたのであった。