村上由佳の「ダブル・ファンタジー」は必読書なり

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最近読んだ小説の中で、ドキドキワクワク感が最高だったこの小説の帯には、「ほかの男と、した? 俺のかたちじゃなくなってる」と意味深なキャッチがある。実はキャッチではなくて、小説中の会話からピックアップしている言葉である。「読者騒然、『週刊文春』史上最強の官能の物語、ついに刊行!」という、ちゃんとした帯書きもある。

誰が称したか「体で書いた本」というくらいに、詳細な性描写が素晴らしい。あるあるレベルでは描ききれないだろうSEX描写のオンパレードなのである。

それまで余り熱心ではなかった村上由佳作品だが、この一作は経験豊富な名シェフが差し出す料理のごとくに、絶品の味わいである。差し出す料理人の器量によって、評価が左右されてしまうのは、こと恋愛小説否、ポルノ小説、おっと失礼、否いなアダルトな高級恋愛小説において致し方ない。容姿に難のある作家の手によって差し出されたとするならば、このような最大級の評価は(おいらの個人的評価はさて置いても)与えられることが無かったであろう。ファンタジーの中にはリアリズムがぎっしりと詰め込まれてあるところが、ワクワク感を引き出す壷なのである。

「ダブル・ファンタジー」という書名は、「男」と「女」の、体は重ねあうが心は決してまじわうことないファンタジーという意味あいをまとっている。「心」と「体」が決してまじわうことないと捉えてみたら、たしかに哲学的ではあるが、とても残念至極なり。ファンタジーはドキドキ感を裏切らない代物であって欲しいと思う。…たしかに年を取るとそう思いがちになる。

おいらはこの「ダブル・ファンタジー」読了後に、作者、村上由佳の過去作品に接したものだが、甘ったるい青春小説節に辟易してしまった。さてはこのギャップこそ、体を張ったことの成果だったのであろうか? だとすれば、いろいろなる妄想が膨らんでくる。おいらはついつい村上先生の私生活が気になってしょうがないのである。