「アジのなめろう」は酒の肴的な逸品メニュー

ajinamerou01
アジの刺身はそのままでも美味だが、少々の手を加えて「なめろう」として調理されたものは、ときどき刺身以上のものと感じる。あえてときどきと書いたのは、味付けのバランスが悪くてとても美味しい等と評価できないものがあったからである。そもそも「なめろう」という料理は、アジをはじめとする青魚の身を徹底的に細かく叩いてから、其の身を味噌、葱、生姜、等々の薬味を加えて出されるメニューのことである。粘り気が出るまで叩かれたアジの身が程よく控えめな味付けが加わって、逸品の酒の肴的メニューになるのである。

ところで日本で食される青魚の代表でもあるのが鯵(あじ)である。「あじ」という名の由来は一説によれば「味が良い」からだとされている。たしかに魚の特有なこくが程よくのっている、美味な魚の典型ではある。鯵の干物にしても、また鯵の丸干しにしても、魚の脂が程よく染みていて、美味しさが一段と増すのだ。身近すぎることからあまり気付かなかったが、この鯵の恵みをこれまでどれだけ享受してきたことだろうか。この青臭い風味というのか、あるいは骨臭い食感というのか…、このような魚の個性を認めずに、肉類と比較してコメントするなどとはもってのほかではある。