老後の生活に関する一考察

昼間、おいらの携帯電話に見覚えのないナンバーからの通信が数回あった。そのつど立て込んでいたこともあり放置していた。その後、帰宅途中の電車内で鳴ったので、そっと出てみる。相手は初老の声で、「○○の弟ですが…」と名乗っていた。他の乗客を気にしつつ、小声で会話を続けていると、電話相手のお兄さんの某作家さんが、昨年亡くなったということを知った。それでご丁寧に、お礼の電話をしてくれたという訳である。知らずに年賀状を出してしまった詫びを述べてその電話を切った。

亡くなったと知らされた作家は、生前は相当なキャリアを積んだ人物である。おいらがお会いしたのは某編集プロダクションの事務所で、二~三回のことであり、それほど深い付き合いはなかったのだ。数年前での御年は70年代とみえたが、当時も現役で、企業史や個人史の執筆を請け負っていたとのこと。相当なキャリアを積んだベテラン作家が、老後になって他人の自分史や企業史の執筆(その中には割に合わない「ゴーストライター」としての仕事も含まれる)を請け負うのだろうかと、以前のおいらはいぶかしくも感じていたものであった。だがやはり、時代がそうさせているのであろう。日本が急激にアメリカナイズされていた当時の世相を思い起こす。

老後くらいは、自分がやりたい仕事だけやって過ごせる人生を送りたいものだ。そうしみじみと想う今宵なり。