この時季こと夏まっ盛りに夏野菜を美味しく食べられるメニューには「ナスとピーマンの味噌炒め」が特筆されるのだ。
時間があるときには家で調理するが、本日は某定食屋にてこのメニューに接することができたのでラッキーでもあった。
夏野菜は夏に食するべきなのでありとりわけ茄子をどういう風に調理すべきかということは課題のひとつではある。焼いたり油で揚げたりするのは基本だが、調味料としての味噌を活用して「ナスとピーマンの味噌炒め」というような料理として、誰かが完成させたのであった。
夏野菜のキュウリをスライスしたものと焼酎とをあわせたカクテルが「焼酎カッパ割り」也。氷割りの焼酎ロックより以上に焼酎の純度を上げてしまうような、独特の風味が漂ってくる。
「カッパ割り」という名称の由来はご存知のように、我が国の有名な妖怪こと河童(カッパ)が、キュウリをことさらに好んだということに依っている。河童がキュウリを好むのは河童が水神の零落した姿であることと関係するという説が有力ではあるが、定かではない。
今回飲んだように、キュウリをスライスしたものの他に、千切りにしたりぶつ切りにしたキュウリが使用されることもある。夫々に特徴があるが、キュウリの鮮烈な風味を活かすにはスライスするのが正解である。
上野公園内の「東京都美術館」にて「LOUVRE ルーブル美術館展」が開催されている。「地中海 四千年のものがたり」という副題が冠せられている。漠然としたテーマではあるが、ギリシャ彫刻の名品が展示されていることを聞き、訪れてみたのだった。
■LOUVRE ルーブル美術館展
東京都美術館 企画展示室
〒110-0007
東京都台東区上野公園8-36
2013年7月20日(土)~9月23日(月・祝)
ルーヴルが誇る200点を超える収蔵品で展観されるというその企画展示会場には、西洋と東洋を結ぶ地中海世界の四千年におよぶ歴史的・空間的な広がりが展開されている。美術展というよりは、地中海をめぐる広大な歴史のビジョンに接する為の博物史的展示会という趣きなのである。
ギリシャ彫刻として教科書に掲載されるような作品には出会わなかったが、それに類する作品群には直接触れることができたのである。ギリシャ彫刻とは、おいらにとってはかつては石膏デッサンのモチーフであったのであり、東洋人の有するものとは異質なる骨格、プロポーション、骨太さ、等に接し、数十年ぶりに圧倒されていたという思いなのであった。
これらの展示物はまさしく、欧州の中でも特にフランス的世界観、歴史観を体現するにうってつけの歴史的遺物なのではある。
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雑誌「the 寂聴」に連載されていた瀬戸内寂聴&藤原新也による往復書簡をまとめた「若き日に薔薇を摘め」という書籍が発刊されている。
かつて数年前に「the 寂聴」という隔月の雑誌が発刊されたことは、おいらにとっても特筆される出来事であった。「the 寂聴」の素晴らしさについては、当ブログにても紹介していたことがある。
■瀬戸内寂聴責任編集の「the 寂聴」はとても面白い雑誌です http://www.midori-kikaku.com/blog/?p=1354
雑誌「the 寂聴」にて連載されていた、瀬戸内寂聴&藤原新也による往復書簡の文章をまとめて発刊されたのが「若き日に薔薇を摘め」である。
表題に採用されたセンテンスには奥深い意味が込められているようだ。寂聴さんが法話で述べられた一節にこの文があったというようだが、捉えられる意味合いは一様ではない。一つには、真っ赤な薔薇の花を鷲づかみにして、挫折と屈辱という棘に刺されて血だらけに成れ、といった威勢の良い解釈もあるが、こと同書の持つ意味合いはといえば少々異なっているのだ。
バラというのは恋。バラには棘がある。摘めば指を傷つけてしまう。恋をすると人は必ず傷つく。それが怖くて恋に臆病になる。若い時は、傷はすぐに治る。だけど年を取るとなかなか治らない。だから若い時に思う存分バラを摘んでおきなさい。--云々ということを述べられている。恋に生き愛に殉じた寂聴さんならではの見解ではあり、天晴至極なのである。
当往復書簡集を上梓するにあたり、様々な紆余曲折が存在していたこと、或いは、当事者たちの個人的な情意的なあれこれが存在していたこと、等々は、「the 寂聴」という特異な雑誌を実現化させたことにとっては有意な条件であった。そして、そんな条件が同書をとても有意な存在感を獲得することをサポートしていたのである。
すなわち以上に述べたようなことなのであり、けだし瀬戸内寂聴&藤原新也による往復書簡をまとめた「若き日に薔薇を摘め」はまさしく名書の名に相応しいのである。
八王子ラーメンの老舗である。当店「でうら」にはメニューが「らあめん」しか無い。
並500円、大盛600円、特盛650円、超特盛700円、の4種類に、チャーシュー、玉ねぎ、メンマの追加増しのメニューがあるのみである。他の八王子ラーメン店に比べて油っこくない。中華麺とスープを味わって満足できるに充分なるつくりだ。
いつでも注文するのは「大盛」である。八王子ラーメンの特長とされる刻み玉ねぎが、醤油ベースのスープにとてもマッチしている。細めの麺にはしっかりとして腰があり、素朴なラーメンの味わいをじっくり味わえるのだ。麺を食べつくす気分にさせてくれる。
肩ロースをじっくりと煮込んだ自家製のチャーシューはとても柔らかく、醤油ラーメンによくマッチしている。メンマにも味がじっくりと染み込んで食べ応えありである。
■でうら
東京都八王子市台町 1-6-12
串焼き居酒屋にて「チレ(脾臓)」の串焼きを食したのだった。武蔵小金井の行きつけの「百薬の長」にて一献傾けつつ、「チレ(脾臓)」の串焼きなどを頬張って、貧血対策を行っていたという訳なのである。
世にある串焼き屋でもなかなか「チレ(脾臓)」にはお目にかからない。食感は柔らかく鮮度が悪いと独特の臭みが出やすい部位である。レバーにも似て、鉄分もその他の栄養素も豊富であり、血分が溢れている。猛暑の季節の夏バテ解消にはもってこいのメニューではある。
店内に貼られた効用書き的案内文によれば「血液増進 栄養保存効果的」とある。まさしく今のおいらの症状改善にぴたりの効能を示しているのだ。
炭火で焼かれているのに関わらず、出されたチレの串焼きには赤い血飛沫ともいうべき生々しい鮮血が目に入ってきた。これは身体に良いだろうと、おいらは迷うことなく口に運んでいたのだった。生々しい血の味は苦かったがそれほどに嫌味も無く口にすることができたのだった。レバーでは物足りないと感じた時には「チレ」にありついてみたいと思うのであった。
■もつ焼き百薬の長
東京都小金井市本町5丁目12-15
042-383-6640
TVでは本日からお盆休みだということからの帰省ラッシュ、交通ラッシュ、等々の報道を見て、おいらも人並みのお盆休みのスケジュールを過ごしていた。
先ずは午前中の墓参りから。公園墓地に向かうがお盆の季節の賑わいは無い。駅前からはお盆のバス特別便もあるはずなのに、想像するかのお盆ウイークには程遠いかったのである。
そして夜になって向かったのは、上州前橋の夏を彩る「第57回前橋花火大会」。敷島公園内には有料席も設けられているというがおいらはそんな趣味は無くて、会場からそう遠くない場の前橋公園内で花火鑑賞の時間を過ごしていた。
市内の飲食店に入ると、地元TV局の「群馬テレビ」がライブ中継を放映していた。同時に大会の模様を「Ustream」にて動画配信されていた。約15,000発の花火が打ち上げられたということであり、規模としては全国的なものには適わないが、猛暑の夏の風物詩として親しみを持って参加していたのだった。
山下清は夏には全国中の花火大会に興味を持って巡っていたというが、前橋の花火大会を鑑賞したという話は残念ながら聞いていない。しかし全国規模ではなくても前橋の花火大会は見る場所、鑑賞するシチュエーションにて様々な顔が用意されている。そういう意味ではとても個性的な花火大会であるということが云えよう。
「もろきゅう」と云えば夏季の酒のさかなにはとても貴重なメニューである。夏野菜のきゅうりに「もろみ」あるいは「もろ味味噌」が添えられていて一緒に食べるのがナイスな、とても相性の良い取り合わせなのであり、もろきゅうのメニューを目にする度に注文してしまうのだ。
今回の「もろきゅう」のもろみはまた一味、手が込んでいたと見え、ピリリとした爽やかな刺激が特徴的であったのだ。
そもそも「もろみ」とは何か?
Wikipediaでは「もろみ(醪・諸味とも書く)とは、醤油・酒などを作るために醸造した液体の中に入っている、原料が発酵した柔らかい固形物のことである。」と解説されている。
つまりは醤油や酒や味噌の原料となるべき原料とは、麦・大豆・米などであり、これらの麹がもろみの原材料となっている。
塩分がピリリと効いていて栄養素満点であるが、これにピリ辛の香辛料を効かせたもろ味がキュウリに乗っていたのである。
夏季には、ピリ辛もろみが身体をピリリと刺激するようであり、ピリリと刺激が効いたもろきゅうは、これからの猛暑の季節にとっておきなメニューと感じていた次第なり。
美術界で「ポップ・アート」と云ったら、アンディ・ウォーホルやジャスパー・ジョーンズの名前が浮かぶが、実際にそれらの作家による実作品に接する機会は少なかった。特定的マスコミやある種の美術業界一派によるポップアート賛歌に比較して、我が国における実際の評価は決して高いものではない。しかも今なお、ポップアート賛歌をうたう一派が美術界を賑わしていると見える。今回おいらが訪れた「アメリカン・ポップ・アート展」もまた、実際にはそんな背景を背負っているかのような印象なのである。
国立新美術館を2階に登り、会場へと入る。ロバート・ラウシェンバーグ、ジャスパー・ジョーンズ、ジム・ダイン、と云った著名作家たちの作品群に囲まれながらも、事実上の飽き飽きとした感情に支配されていたのだった。
ふと光明を見た気になったのが、アンディー・ウォーホルのブースに足を運んだときではあった。「マリリン・モンロー」「毛沢東」の有名な肖像画シリーズに加えて「キミコ・パワーズ」という日本人女性の作品に接したときに、ふと、ポップ・アートなる作品にも作家と鑑賞者との血が通っていたことを感じ取っていた。
云ってみれば「アメリカン・ポップ・アート」というジャンルは、ほぼアンディー・ウォーホルのみに冠されるものであろう。けだし他のアメリカのアーティスト達は邪道である。それを確認するだけでも当展覧会に足を運ぶという価値はあったのである。
京成線「立石」駅を下車してすぐのところに位置する「鳥房(とりふさ)」に立ち寄ったのだ。鶏肉専門店のそこでの名物「若鶏唐揚げ」を食することが目的だ。
メニューを見ると「若鶏唐揚げ 時価」とある。怯むことはない。時価の詳細はといえば、600円、630円、650円、680円の4種類という説明だ。少々悩んで、680円のものを注文した。
若鶏をまるごとに揚げる、素揚げするというシンプルかつ豪快な調理法にて提供されるのだ。注文してから約30分あまりの短くない時間を瓶ビールと少量のお通しで過ごすのだが、その間には否が応にも食欲が刺激されていく。待ち飽きた頃になって漸く若鶏唐揚げが目の前に現れたのだ。
若鶏の薄くて新鮮な皮がパリっとはじけ、身をほぐすと中から鶏肉のジューシーな香りが立ちのぼる。その身を頬張れば、若鶏独特の繊維質の身が口腔の中にあふれていく。こんな鶏料理を味わえる居酒屋を他に知らない。
■鳥房(とりふさ)
03-3697-7025
東京都葛飾区立石7-1-3
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女優の山口果林さんが著した「安部公房とわたし」で、文豪・安部公房とのかつての愛人生活を赤裸々に綴っている。帯には「君は、僕の足もとを照らしてくれる光なんだ――」とある。果林さんが桐朋学園演劇科時代の師匠と生徒という関係を経て、男と女の濃密な関係へと移っていく事実を、極めて淡々と客観的に綴っている、その抑えた筆致が特徴的である。
そんな抑えた記述の中から何よりも、安部公房が愛人関係を持っていた当時の果林さんに、相当に入れあげていた関係を見てとることができる。師であり、伴侶でもあった二人の関係は、所謂不倫関係として継続され、安部公房の生存中にその関係が公にされることはなかったのだ。
本の表紙には、愛人関係を始めた頃に撮影されたと見られる果林さんのコケティッシュな写真が用いられて目を引く。若い当時の相当な美女振りを印象付ける。そしてページを捲ってみるとその口絵には、安部公房に撮影されたと見られる果林さんの若き頃のヘアヌードを拝み鑑賞することができる。
NHKの朝ドラマ「繭子ひとり」に抜擢され全国区的女優の名声を得た果林さんだが、当ドラマ出演中に子供を身篭っておろしたことや、安部公房夫人との葛藤、子供の頃には両親にも打ち明けられなかった性的な悩み事を打ち明けた話等々の驚くべきエピソードも綴られている。
山口果林さんのファン、安部公房の愛読者はもとより、文豪と女優の熱く長い恋物語としても読むことができたのであった。
宮崎駿監督の話題の作品「風立ちぬ」を鑑賞した。公式サイトの説明では「宮崎駿監督がゼロ戦の設計者・堀越二郎と作家の堀辰雄をモデルに、1930年代の日本で飛行機作りに情熱を傾けた青年の姿を描くアニメ。」とある。
堀辰雄については、著名な作家としておいらを始めとして誰もが知っているのだが、もう一人の堀越二郎については、おいらは知ることのない人間であった。
多少調べたところ堀越二郎とは、東京帝国大学出身の日本の航空技術者である。現在の三菱重工業に入社して経験を積み、ゼロ戦こと零式艦上戦闘機の設計主任として特筆されている。戦時下にて軍部の要請によりかなえた零式艦上戦闘機である。これが隣国の韓国等では、堀越二郎が旧日本軍に支援したことから軍国主義的な設定であるなどという批判があるようだが、そんな評価には与することはできない。日本人として生きていた人間の大多数が戦争被害者であったことを思えば、軍国主義的人間であったなどという評価は不条理極まるものではある。
ところで映画タイトルとなった堀辰雄さんによる小説「風立ちぬ」には、あまり戦争についての記述は無かったようだが、この映画のタイトルは堀辰雄さんの小説をそのまま使用している。小説「風立ちぬ」とは、エリート文学青年と薄幸の少女との恋愛的なテーマのやり取りがドラマの中心を担っている。
これを映画のタイトルとして冠した狙いには、強烈なものを感じさせている。
薄幸の男女のエピソードを中心に置きながら、戦争に巻き込まれていた日本のストーリーを重ね合わせているようだ。その試みは決して否定すべきではないが、成功しているとは云えないことも確かである。
http://kazetachinu.jp/
おおきな氷の塊を専用のかき氷機でスライスしておわんに載せたかき氷。暑気払いにはうってつけである。スーパーやコンビニで売られるものは食べたいとも思わないが、氷専門屋のそれは食べる価値あり。
前橋市内「野口商店」で提供されるかき氷は、今ではレトロ感漂う夏の風物詩のひとつとなっている。しゅるしゅるといった音を立てて削られる音もまた夏の風流のひとつではある。
かき氷の上にかけるシロップはまさにまがいもの的キッチュの味わいだが、それさえもセットとなって、風物詩を成立させているのである。
数あるメニューの中でおいらが注文したのは、「抹茶あずき」。おいらの少年のころには多分なかった味ではある。懐かしさと同時に新しさを希求する気持ちが働いていたのであろう。大人になって少年のころとは味覚が違ってしまったということであり、仕方なかった。氷の上には緑色した抹茶シロップが掛かり、氷の下にはあずきが隠れているという二重構造を呈していて、はじめと終わりに二種類の味が愉しめたのだ。
抹茶味のかき氷は意外にも人気であると見え、客の半数近くが注文していた。ちなみに他の人気はと云えば、「マンゴー」である。これもまたおいらが少年期にはなかった味でもあった。レトロと新しさが同居する専門店の「かき氷」を見直したのでありました。
■野口商店
027-221-3436
群馬県前橋市表町1-15-6
ソーメンも冷やし中華も飽きていた。うまい冷麺が食べたいと思っていたときのことである。おいらは上州の前橋に帰省しているのだが、偶然に入った焼肉店で美味しい「冷麺」に遭遇した。
上記の写真で見てもらえればわかるように、取り立てて特長というものを強調していないという普通の冷麺である。あえて述べれば盛岡冷麺風の太めの麺に、牛筋の出汁を効かせたスープが特長である。
自家製の白菜キムチにキュウリ、ゆで卵、ゴマ等々ががトッピングされていて、とても食欲をそそっていたのだった。
昼間に訪れたというのに、おいら以外の他の団体客はといえばすでにアルコール類を注文しつつ、豊富な焼肉メニューに舌鼓を打っていたような光景に遭遇して、おいらはなかなか釈然としない気持ちに圧倒されていたのではある。今度はここの焼肉を喰いにきたいという思いを抱きつつ、店を離れていた。
■南大門 ホルモン館
群馬県前橋市下小出町1-2-2
実家では先日には、詐欺関係の事件に巻き込まれそうになっていたのだった。未遂ともいえる詐欺紛い事件の詳細については記すことができないのだが、おいらも出会っていたその某詐欺師は一見した限りは悪人顔ではなく、口もうまく、愛想もよかった等ということもあり、父はまんまと騙されるかかっていたのだった。騙される寸前に警察へ通報したのも父だったので、その後はいろいろ説明に時間をとられることになってしまっていた。おいらもその関係の詐欺師に接して関わった証人の一人として、警察へと赴くこととなっていたのである。
こんなことは何度とはあってはならないことだが、些かの興味関心もあり、担当の刑事さんとは、あれこれと重箱の隅を突くような質問もしてみていたが、刑事さんからの面白い話は残念ながら受け取ることはできなかった。来週にもまた話を聞きたいということなので、詐欺師の実態等についてはもう少し追究していきたいと考えているところである。この次にはもう少し面白くて実態のある書き込みができればいいなと考えている次第である。
夏休み休暇で岩手花巻の「大沢温泉」を訪れた。ご存知のように宮沢賢治が愛した温泉として有名であり、未だに幅広いファンを持つ名湯である。
新花巻駅で新幹線を降り送迎のバスに乗り込んだところ、都内で「賢治の学校」を運営している鳥山敏子さんが同乗していて、車内で色々と面白い話を聞かせてもらった。在来線の花巻駅からはたくさん乗車してきたのだが、その中には今の教え子だという小学生とその母親がいて、前列に陣取ったグループで話の華を咲かせていたのだ。この日は全国中から「賢治の学校」関係者が大沢温泉に集ってイベントなどが行われるようだ。72歳になるという鳥山さんだが、生徒たちと担任という関係で未だ教育の現場で活動しているエネルギーには感服させられたのだった。
温泉に着きおいらは「菊水館」という別館に投宿。茅葺屋根の木造田舎風建物が旅情をそそる。館内には賢治さんが幼かった頃に家族ら大勢で撮影した記念写真が飾られていて、賢治ワールド満開である。宮沢賢治の文庫本でも用意してくるべきだったと悔やむがいまや遅し。賢治さんが愛した温泉の湯に浸かって空を眺めつつ、賢治ワールドに浴する貴重な時間を愉しんだのだ。
上州群馬県の名物のひとつに蒟蒻(こんにゃく)がある。こんにゃくいもから加工されるこんにゃくは、群馬県内で90%近くが栽培されていて、そのほとんどが下仁田を中心とする群馬県西部の農地に集中されている。
上州人のおいらは幼少の頃からこんにゃくに親しんできた。味噌汁の具として、おでんの具として、あるいは刺身の具として、その食材は県民のお腹を満たしていたということがいえる。
だがしかし、こんにゃくという食材はダイエット食材として利用されることがほとんどであり、おいらは高校卒業後の上京してからその事実を知ったという経緯があった。
おいらが好きなこんにゃくの顔は灰色をしている。いわばロマンスグレーとでも云いうるような灰色をベースに、アクセントとしての黒ゴマの足跡を残しているというのが特徴である。
そして独特の加工手順を踏むことからも、灰汁を含んだ味わいもまたこんにゃくを味わう上で欠かせないのだ。
最近は東京都内で「刺身こんにゃく」なるメニューに出会うことが多くなっており、そのほとんどでがっかりと落胆させられる。その色形から、綺麗事の見え透いた味わいに至るまで、どれもが本来の日本産こんにゃくの条件を満たしてはいないと思われるのだ。
先日に地元で食した「蒟蒻の味噌おでん」はそんなマイナスなイメージを払拭するに充分な味わいだったのである。厚切りにされたこんにゃくの上に、甘辛く煮込まれたおでんの味噌がかけられているという素朴な料理なのだが、その素朴さが却ってこんにゃく料理の王道を歩んでいるということを実感させていた。
上州産の蒟蒻(こんにゃく)は刺身より味噌おでんで味わうべしなのである。
宮崎産地鶏の「赤鶏」のタタキを食したのだった。宮崎県を始め九州が特産の地鶏として全国区的となったブランド地鶏が「赤鶏」である。
関係ホームページ等では宮崎県霧島山麓で天然水を飲んで健やかに育った地鶏だと喧伝されている。見た目が赤いのに加えて肉質は柔らかく味はコクがあり、身がしまっている、等々の評価が定着している。
注文した「赤鶏」は見た目も鮮やかであり、そのタタキの身はモモとムネの二種類が提供されていた。コクのあるもも肉とあわせてあっさりとタンパク質豊富なムネ肉とを一度に食することとなっていた。やはりモモ肉のほうが食べ応えがあり、満足感を感じさせていたが、ムネ肉を使った料理としては逸品の味わいだった。
ふと立ち寄った古書店にて「生誕100年記念 ヘンリー・ミラー絵画展」という図録画集を発見したので、購入していたのだった。
中を開けて読んでみると、文豪ヘンリー・ミラーは30歳代から始めた水彩画において天賦の才能を発揮していた。彼はその後の生涯を通じて数千点もの絵を描いているがそれらも自由の精神にて満ち溢れているということが強調されている。
そしてページを括ってみたところ、最近ではよく云われる「ヘタウマ」的な作品がほとんどであった。とてもシンプルな線と色とで縦横無尽に筆を走らせている。水彩の色は濁りなく鮮やかであり、隣り合う色彩との相性が絶妙ではある。決して具象的には描いていない作品群の中には、とても鮮やかな色を駆使して、深い人生観を表現したものがあったと受け取っていたのだ。
其れはまた、ヘンリー・ミラーの作品を、これからもっと読んでいきたいと感じていた体験でもあった。