「八戸せんべい汁」が「アルデンテ」であるという根拠

鍋シリーズの今宵は「せんべい汁」なり。八戸名物の「せんべい汁」をつくったのです。

白菜にきのこ類、根菜類などを醤油ベースの出し汁でぐつぐつと煮込み、火が通ったところでそこに「せんべい」を加える。それだけの極めてシンプルな料理である。同じせんべい汁でも料理店やそれぞれの家庭で仕込む具財は異なっており、特性のせんべいを用いることだけが共通のレシピだと云えるくらいだ。つまりは緩いレシピで広まった郷土食だと云える。北国八戸の家庭では、寒くなればこのせんべい汁が日常的に食されていたことも納得である。

B級グルメの大会でも2度まで銀賞を受賞しており、全国的にその名前が知られることとなっている。今年も金賞候補と噂されながら取れなかった。万年銀賞グルメと囁かれてもいる。

その有力な理由としては、高級食材を使っていないためという指摘もある。「南部せんべい」は旧南部藩ならではの名物ではあるが、当地高級とまでは云えずとも甲府の「鳥もつ煮」、厚木の「シロコロ・ホルモン」等のような、ガツンとしてインパクトの強い食材とは程遠い。翻ってみれば「せんべい汁」がまさにB級食材を用いた郷土食であることを示しており、もっともっと誇って良いのだ。

ところで「八戸せんべい汁」を普及しようと活動をしている「八戸せんべい汁研究所」という団体がアピールするのは、せんべい汁がイタリアのパスタのような「アルデンテ」という食感が楽しめるということだ。八戸に旅行した時にはせんべい汁のポスター、媒体広告等にてこの「アルデンテ」のキャッチコピーを目にし、些か苦笑を禁じ得なかったのである。だがそれなりに根拠もあるのだ。

岩手や青森の南部せんべいの特徴は、粗塩と重曹、水、小麦粉が原料となっている。地元で収穫された小麦粉が主原料となる。よく練ってせんべいの生地をつくり、これを煎餅用の二枚型という型に生地を入れて、焼いていくのだ。この工程により、煮込んでも煮崩れることが無くもちもちとした食感が生まれるのだ。しかも水分をよく吸い込むので、煮込んで数分でアルデンテの完成だということになる。受け狙いだとも思われていた「アルデンテ」のPR戦略は、納得できる根拠を併せ持っていたということになる。