異端の香りを振り撒く「茗荷(みょうが)」の蕾の清冽さ

茗荷が美味しい季節になった。

その昔、茗荷を食べると馬鹿に成る、物忘れが酷くなる、等々の俗説が蔓延していた。子供の頃は俗説とも知らずにその「馬鹿に成る」理由をあれこれと詮索していたことがあった。当時思い当たったその根拠はと云えば、その強烈なる独特な香りが神経を麻痺させるのではないか? ということだった。

今ではお笑いものではあるが、子供心にその根拠は正当なものであると何年間も信じ続けていたものだ。特に幼少年期の初心な感性にとって、茗荷のような異端の香りは強烈な印象を与えていたのであろう。

ところで食用にされる茗荷と云えば、花開く前の「蕾」の部分である。いくつかの蕾が寄り合った形状であることからこの部分を「花蕾」と呼ぶこともある。我々は花として開く前の清冽な香りと味わいを愉しんでいる訳である。

食し方としてポピュラーなのは、「薬味」としての利用である。冷奴、蕎麦、等々に添えれば主食材を一段と清冽にさせ、特に夏の体力維持にはもってこいである。個人的には刺身の薬味としてもナイスな取り合わせであり、時々利用しているのである。

その他、朝漬け、味噌汁、天ぷら、酢の物、等々の具としても使える。これらの料理だと茗荷が主役にもなり、茗荷冥利に尽きるのだと云っても良いくらいだ。