村上春樹さんの不可解な最新作「木野」を読む(1)

故郷へ帰省した帰りの各駅停車の電車内で、月刊文藝春秋誌に掲載されている村上春樹さんの書き下ろし的最新作「木野」を読んでいた。二十数頁の掌編作品ですんなりと読了したのだったが、此れがとても不可解極まる印象を抱かせる作品だったのであり、帰宅した後のおいらの脳味噌もそんな不可解感に捕われてしまったのである。

このくらいまではネタバレではないと考えて敢えて記すのだが、「女のいない男たち」というサブタイトルが示すように、表題の「木野」とは主人公の名前そのものであり、妻を寝取られた哀しくも切ない男の離婚劇とその後の姿などが描かれている。物語の設定はかような代物なのだが、読み進めていく中で、日本の小説世界にこれまで無かったごとくの不可解さを感じ取らずにはいなかったのである。

何しろそもそもとして、登場人物の設定が混乱を極めているのだ。主人公の木野の設定はともかくとして、ヤクザ紛いの行動をとる陰のヒーローが登場しつつ、そんな陰のヒーローの去就が詳らかにされないままに、主人公の不可解かつ不明瞭でなおかつ不条理な結末へと進行してしまうのだ。春樹さんの新しい開眼に基づくものなのかは知らぬが、このような日本人による小説に接したのは稀ではあった。本日は毎度ながらおいらの脳味噌がアルコール漬けになっているのでキーボードを畳むが、明日以降にその謎に迫りたいと考えているところなのである。

(この稿は明日以降のブログに続きます)