立川の「だるま」で赤々として美味い「タコ酢」に出会った

takosu01

タコは茹でると赤くなるが、酢漬けにするとよりいっそうその赤味を増していく。以前はこの「タコ酢」なる料理に遭遇してその異様なる姿かたちを目の前にして、いささか閉口していたものではあったが、今ではとんと気にならなくなり、それどころか却ってこの鮮紅の色合いに対してとても親近感を感じ取っている。食欲をそそられるくらいなのだ。なんとなればその赤紅の発色は天然のものであり、近頃の中国産食材の危ない添加物の色々の類いとは一線を画しているし、その相貌はまるで酔いつぶれる前の充血して赤ら顔になった呑兵衛を彷彿とさせるのであるからにして、おいらもかなりの愛着を抱いている料理のひとつだ。

立川の「世界堂」に画材の買い物で訪れた帰りに立ち寄った「だるま」という居酒屋にて一献傾けた際に、おいらは久々にタコスならぬ「タコ酢」という懐かしいメニューを口にしていたのであり、好き好きとの思いを益々に累乗させていたのだったという訳なのである。

余談になるがこの立川の「だるま」という居酒屋には、近くに場外馬券を取り扱うビルがあることから、競馬ファンが昼間から集って酒をあおっている。とくに土曜日曜の日には、競馬の生中継をするテレビの前には競馬マニアの団体が陣取ってたむろしているというすこぶる珍しい光景に立ち会うことになる。店内で堂々と競馬新聞を広げるカップル。向かいの集団では競馬新聞をテーブルに広げてあれやこれやの競馬レースの検証が行なわれている。ギャンブル好きの呑兵衛の会話は聞いていると飽きないものがある。

「男のひとは可愛いわね。赤ちゃんといっしょね」とは、競馬ファンと思しき中年女性の声。続いて聞こえてきた言葉は、「でもねえ、競馬にのめり込むのは趣味だから赦せるわよ、お小遣いの範囲でやっていればだけどね。でもね、こっち(指を立てて女のことをアピール)のことは駄目ね。絶対に駄目。そんな女に払う金があるならば、もっと生活費を入れてよっていいたいと思うわよね‥」と、大声で説教していた光景はとても印象的だった。家族もちの有閑マダムなのかも知れない。

■だるま
東京都立川市柴崎町3-2-14