魚の味醂干しは日本の食の叡智を感じさせる逸品なり

味覚のハーモニーを奏でる大衆食品の逸品として、昨日のタレ焼き鳥に続いて挙げておきたいのが、魚の「味醂干し」である。アジ、イワシ、サバ、サンマ、等にて一般的に用いられる「開き」「干物」といったものに一アレンジが加わったものだ。一般的な干物の美味さは認めながらも時々は「味醂干し」を焼いて食べたくなる。やはりおいらの味覚に染み付いて離れることのない懐かしい逸品なのだ。

そもそも「味醂」という調味料とは酒類の一種であり、14~15%のアルコール分を含んでいる。もち米を主原料としており、日本酒よりも甘味が強く、黄色味の強い琥珀色を呈しているのが特徴である。江戸時代の頃には酒として飲用されていたこともある。近頃のスーパーでは「味醂風調味料」等というものが出回っておるが、これにはアルコール分が存在しないか低かったりしており、腐敗の危険性も高い。極めて邪道的調味料なのであるからして要注意なのだ。

味醂干しに用いられるのはこの味醂の他に、醤油と砂糖が一般的だ。これはまさに日本的な三位一体的調味料のトライアングルと云ってもよく、味醂干し料理の奥深き伝統を垣間見せるのである。

調理法は干物と同様にガスコンロに乗せて中火でじっくりと焼き込めば、魚のストレートな味わいに加えて天然味醂の甘さが旨さを引き立てるのだ。このプラスα的な甘味が味覚のポイント。しかも甘味が強いからといって決してもたれることもない。しかも塩分制限をしている患者にも優しいということでもあり、おいらも好物にしているのです。