イカの丸焼きの、赤くプクっと膨れた姿がいびつな食欲をそそるのだ

イカの丸焼きといえば、祭りや縁日の屋台料理としてよく接するメニューである。

ゲソと本体の全てを炭火で焼くのであり、そのボリュームは、もったいぶってイカ刺しなどとして喰らうものとは比較しようも無いボリューム感がある。だから晴れの日に喰う料理にうってつけなのであり、子供が親にねだってイカの丸焼きを頬張る姿は微笑ましいくらいだ。

さてこんなボリューム感のあるイカの丸焼きを居酒屋で注文したところ、ボリューム感以上にその、プクっと赤く膨れた膨満感に見とれて、しばし観察したのであった。

白く透き通って繊細なはずのイカが、炭火の遠火で焼かれてしまえば、このように真っ赤に染め上がっていて野生の食欲を刺激していく。しかもピンピンに突っ張って、輪切りになって皿に乗った姿はまるで、突っ張り姉ちゃんの姿かたちともだぶってしまい、いびつな食欲をそそるのである。

イカの丸焼きを食する時はまず、イカと格闘する心構えが必須である。タウリンや亜鉛が豊富で栄養価が高いとはいえ、必ずしも口に優しく美味だという訳ではない。独特のエグミがあり、唇に独特の刺激をもたらす。子供の頃はこの刺激感がちょっと苦手だったという記憶が蘇ってくる。

ともあれ、丸焼き料理にするからには、バターや醤油や酒やその他の、へたな調味料等は必要無し。ただ焼いたものを口にするのが本来のイカ丸焼きの食し方の基本なのである。