「奈良漬」の奥深き味わいには、日本のスローフードを感じ取ったのだ

我国には「奈良漬」と呼ばれる漬物が在る。奈良地方で定着した漬物の一種と見えるが、なかなかこの漬物には、独自の道を行くという心意気にも似た方向性を感じ取るのであり、常に外食のメニューにはこれが在ったらとにかく口にしてみよう(美味い不味いは問わずに)という嗜好性をこのところ持っているおいらである。

奈良漬はとても風味豊かであり、其れはまず「甘い」のが特徴である。何度も新しい酒粕(さけかす)に漬けられながらその姿を琥珀色に染めていくのだ。材料となるのは、白うり、胡瓜、西瓜、生姜などの野菜であり、我国に一般的に自生する野菜の類に他ならない。つまり特別な食材へのレシピを施すのではなくて、一般的な野菜を素材にしつつ、極めて個性的な稀に見る類の逸品が生み出されているのである。

酒粕というものはいまでは「甘酒」の原料としても流通している。これが「奈良漬」の準主役的存在である。主役はやはり日本で自生もする白うり、胡瓜、西瓜、生姜などの野菜類である。母屋が店子に店を取られることは無いのであるからして、主役はあくまでも野菜類であることは強調しておきたいのだ。

何度も漬け込まれることにより、塩見が次第に引いていき甘味が際立っていくのである。これこそは我国におけるスローフードの代表的メニューではないかと考えているところである。