さり気なく刊行されていた村上春樹さんの「ねむり」

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村上春樹さんの「ねむり」を読んだ。眠ることが出来なくなった女性の一人称による告白形式の小説である。

刊行されたのは2010年11月。「1Q84 BOOK 3」が発刊されて、「BOOK 4」の刊行が期待されていた当時のものである。つい先日に同書刊行の存在を知り、購入して読み進めていたものであった。

とはいってもこの作品は、春樹さんが1989年に書いて発表した「眠り」をリライトした作品である。この最新の時期のオリジナルという訳ではない。同書のあとがきにて春樹さんは書いている。いわく、

「そのときのことは今でもよく覚えている。僕はそれまでしばらくのあいだ、小説というものを書けずにいた。もう少し正確に表現するなら、小説を書きたいという気持ちにどうしてもなれずにいた。その原因はいくつかあるが、大まかに言ってしまえば、当時僕がいろんな面において厳しい状況に置かれていたため、ということになるだろう。」

村上春樹さんにとってこの作品については、当時の特別な、何かしらよくない事情が介在していたようなのである。そんなときに執筆されて発表されていたのが「眠り」という作品であった。この「眠り」は当時に執筆された「TVピープル」という作品とともに、文庫版にて収録されている。

今年もまたノーベル文学賞の受賞に期待がかかる村上春樹さんの、最新発表作である。これがきっかけであれなんであれ、春樹さんのノーベル文学賞受賞を、ファンとしてこの季節には、たっぷりと願っている。