秋田産「山の芋」で、大地の恵みの「山の芋鍋」をつくったのです

ある商店街にて秋田県の鷹巣町産「山の芋」を見つけ、早速買い込んできた。山芋ではなくて「山の芋」だ。ピカピカとして濃褐色に黒光りしているようにも見える。秋田に旅行するとよく土産に買ってきた、とても貴重な逸品である。秋田の「鷹巣町」とは県北に位置した町で、今では近くの町村合併で「北秋田市」とされている。大館と能代に挟まれた小都市であり、近くには森吉山があり、山麓周辺にはブナの原生林や多数の瀑布が散在している。

豊かな自然の中で栽培された山の芋はゴツゴツといかめしく、中身がぎゅうぎゅうと詰まっている。注目すべきは外見ばかりではない。関東のスーパーに並んでいる長芋などと比べてみれば、摩り下ろしたときの粘り気が全然違うのだ。この山の芋を摩り下ろして丸くして鍋に加えれば、絶品の山の芋鍋になる。他には何も加える必要が無い。とてもシンプルで野性の滋味あふれる田舎鍋の出来上がりである。

初めて山の芋鍋を食したのは、秋田の乳頭温泉郷内「鶴の湯温泉」の温泉宿の夕食だった。秘湯として名高く全国から温泉マニアが集まる鶴の湯旅館の、有名な名物鍋にこの山の芋が使われている。

http://www.tsurunoyu.com/FONDMENT/t-shoku.html

秋田の山の芋あってこその名物鍋なのだ。囲炉裏に大きな鍋が吊るされていて、茸や季節の野菜が煮込まれたスープの中には、この山の芋を団子状に丸くしたものが入っている。それを一人一人のお椀に分けて味わうのだ。何杯もお替りがしたくなったが、なかなか他の宿泊客を掻き分けて独り占めできるものではない。土産に買い求めた山の芋を材料に、家でもこれまで何度かこの山の芋鍋をつくって味わってきた。

秋田風に鶏の出汁に味噌味のスープが、山の芋鍋を引き立てる。ほっかほっかのスープに煮込まれた山の芋を掬って口に含めば、自然と身体の中からほかほかしてくる。冬の鍋料理に欠かせない逸品となっている。