故郷の「だるま弁当」の味は今も健在なり

上州前橋の故郷に帰省中なり。朝食を抜いて電車を乗り継いでいた上野駅構内を歩いていると駅弁コーナーに遭遇した。ウインドウを覗けばきらびやかな海鮮弁当、ボリュームがっちりの洋食弁当に挟まれるようにして、だるま弁当はひつそりと並んでいたのだ。

早速買い求めて電車の座席に座るとともに包み袋の紐を開いていた。中から現れたのは真っ赤な顔しただるまの容器。その顔つきはちょっぴり怒っている表情にも写っていた。そしてその真っ赤な容器の顔のふたを開くと目に飛び込んできたのが、大き目の煮しいたけだ。甘辛の濃い目の味付けが食欲をそそる。それだけではなく見た目も微笑ましいのがピンクとシルバーグレーの2色のこんにゃく、そして、鶏の焼き物、ごぼうの肉巻き、栗、黒豆、わらびの煮物、筍、漬物、などなど、どれもが昔食べたが最近はついぞ見かけなくなったというものばかりだ。

甘辛しいたけの風味が口の中に広がったところで塩味の効いた漬物をがぶりと齧れば、これが程よいアクセントとなり、食の有り難味もいや増していくのである。

だるまといえば少林寺の高崎だるまであり、その伝統工芸品が培った歴史と同様に、だるま弁当の具の一つひとつは、日本食文化の伝統によって培われたものばかりなのである。懐かしいという感慨ばかりでなく、これからの将来的な食文化を担っていくべきものたちであることを感じつつ、味わい尽くしたのでありました。